【短編】桜咲く、恋歌にのせて
「大体何年片思いしたと思ってんの? 結依が俺に向ける顔や呼ぶ声で、気持ちバレバレだっての」
相変わらずクスクスと笑うヒデにあたしは唖然としていた。
私の気持ちなんか当の昔に分かっていて、それでもずっと友達でいたってわけ?
「じゃあ、何で」
「……ったんだよ」
「え? 今、何て?」
ボソッと呟いた声が聞こえなくて聞き返したら、ヒデは顔を傾けて視線を下に落とした。
「結依から“好き”って言ってくれるのを待ってたんだよ。なのに頑固だから中々言わないし。
それでも結依は俺に一途だからいいかなって思ってたんだけど」
照れている姿は新鮮。
さっきまでの余裕たっぷりの態度が嘘のよう。
それでも言葉の端々に見える自信は一体どこからくるのだろう。
「好きになったら一直線だし、周りなんて眼中にないし……あっ、昔は俺のこともそうだったしな」
遠い目をしていたヒデが私を見つめてくる。
「だから言ってるじゃん、隙、ありすぎ」
「隙なんてないし」
「……本当に?」
風が吹いたかのように髪が宙を舞う。
微かな音が聞こえる。
顔色が音を立てて変わっていくような気がした。
「……っ!!」
「ほら、隙みっけ」