【短編】桜咲く、恋歌にのせて
「気持ち伝えるつもりだったのになぁ」
ため息をつきながら、花も散り青々とした葉をつけて風にそよぐ桜の木を眺める。
季節の移り変わりと共に色を変えてはまた、桜色の花を誇らしく咲かせる桜。
一年前、
桜が咲き誇る季節。
大学入学して以来ずっと友達だったヒデから突然キスされて、そこからすべてが始まった。
その時うまくいっていなかった彼に偶然にもその現場を見られ、あっさり別れを言われた。
儚く散る桜を自分の恋と重ね合わせ、人を好きになることも信じることも怖くなった私。
だけど……。
キスをされて以来ヒデのことが気になって。
『信長と秀吉と家康だったら、結依は誰選ぶ?』
なんて訳の分からないこと聞かれるし。
『今は秀吉かな。もう遠慮はしないから』
なんて意味の分からないこと言ってくるし。
軽くてチャライと思っていたヒデが、あまりにも真剣になるもんだから。
意識せずにはいられなかった。