【短編】桜咲く、恋歌にのせて
満開の桜に桜吹雪。
暗がりの中、ひっそりと咲く桜の前で二人きり。
そこで初めてヒデの気持ちを聞いた。
『好きだよ』
ってヒデが私に言ったんだけど。
そう、その後ヒデは自意識過剰な発言をしたんだ。
『結依は俺のこと好きになるよ』
って。
……そうなったけど。
そして極めつめがこれ。
「私が好きって言うまで何も教えないし、今まで通り友達……か」
片足で地面を蹴って小石を散らばらせた。
そこにつま先で愛しい人の名前を書く。
誰にもばれない文字。
私の気持ちもばれないようにしているんだけど。
「気付いてそうなんだよね」
友達宣言をしたヒデは、あれ以来本当に何もなかったかのように今まで通りだった。
“好き”って言うことも、私に触れることもなく。
ただの友達。
たまに突き刺さるような視線を感じただけ。
「で、私はいつからこんなに好きになったんだろう?」
ヒデに好きと言われ、私への強い想いを感じたあの日。
また桜が咲き乱れる季節が来た時に、もしヒデが変わらずに思ってくれていれば、私もヒデのこと想っていたら……。
気持ちを伝えようって思っていたのに。