サヨナラ、セカイ。
服を整えて、新しく淹れた珈琲を飲みきった頃。また来るよ、と優しくキスを落とされる。

「・・・できたら来るときに連絡がほしいんです」

くつろぎモードで前触れもなく・・・っていうのは心理的に落ち着かない。ユウスケときちんと終わるまでは尚更。

「そう・・・だね。そうしたいんだけど俺のスマホは彼女がチェックしてるから。・・・今はちょっと不自由なんだ、色々とね。でも考えてるからもう少し待ってて」

眉を下げて細く笑む先生。苦そうに自嘲の色を掠めて。

「今に始まったことじゃなくて、結婚もどれも敷かれたレールを拒まなかった自分のせいなんだろうな」

悔いながら、何に抗おうと藻掻いてるかは分からない。先生が抱えている“傷”をわたしが癒せるのかだって。

だけど。独りで立ち向かおうとしてるこの人を。ここで待ってあげたいと思ってしまった。わたしがいるって。言ってあげたくなってしまった。

ふたりとも壊れてしまったら。わたしもそこで終わればいい、今度こそ。引き留めるものもないだろうから。





わたしはわたしで。ユウスケとの関係を終わらせないといけない。離れるのを名残惜しそうに帰っていった先生を思い浮かべ。

スマホの画面を見つめながら、いつかこんな日が来たはずだ・・・と。深く息を吸った。



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