サヨナラ、セカイ。
4-1
あまり変わり映えのない一日が終わるごとに季節も進んでいく。

吹く風の冷たさが緩んで桜の開花宣言をニュースで知る頃には、わたしの小指には透かし模様のホワイトゴールドのピンキーリングがはまっていた。

真ん中にアクアマリン、その両脇はダイヤモンド。小さくても澄んだ輝きをキラキラと放つ。仕事中もつい眺めてしまって。そこまで浮かれてはいないけど、・・・ううん、やっぱり嬉しくて浮かれてるのかな。

ただのブランドチョコで申し訳なさすぎの、高価なホワイトデーのお返し。面食らったわたしに悪戯っぽくナオさんは笑った。

『初めてのプレゼントだし見栄張ったんだよ。これが精一杯だから次の期待には添えないな』

なにか約束をもらったわけじゃない。それでも。ブレスレットでもネックレスでもないことに、特別な意味を勝手に期待したくなってしまう。そんな自分を冷静に宥めながら、どんどんナオさんから離れられなくなっていくのだ。

愛が。すべての免罪符にならないと知ってるのに。
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