サヨナラ、セカイ。
残暑と、台風の脅威も笑い話ですまなくなりそうな今日この頃。いつもの閉店作業を終えると、着替えるために急ぎ足で更衣室に向かう。一秒でも早くナオさんに電話をかけたかったから。

うちの会社は仕事中でも私用スマホの携帯は許されていて。融通はきくけど、ナオさんから着信があったその時間は社長に来客があったから電話には出られず、折り返しもできないままだった。

着信は4時前。今日は土曜で午後の診察は3時まで。会える連絡かもと期待が膨らむのを半分は冷静に、違う可能性を残しておく。

「お先に失礼しま~すっ」

「お疲れさま!気を付けて帰ってねー」

郁子さん夫婦に挨拶もそこそこ、裏口から出た瞬間に手にしていたスマホをタップ。もう出られないかな。不安と焦り。

『沙喜?』

でも拍子抜けするほどすぐに繋がったから、もんどり打つ勢いの慌て口調で。

「ナオさん、ごめんなさい!電話おそくなっちゃってっ」

『大丈夫だよ。仕事終わったの?お疲れさま』

「うん、いま終わったとこ!ナオさんは?」

『その彼女を出待ちしてるところ』

「!」
< 49 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop