サヨナラ、セカイ。
途中で合掌造り風なお蕎麦屋さんに寄り、天ざるそばのセットでお腹を満たす。腰のある手打ちそばは、スルスルと喉の奥に滑り落ちて行く感じだったし、素揚げしたみたいな天ぷらも、新鮮な野菜の甘味が引き立っていて絶品だった。

「ここね、来たら必ず寄るんだ。沙喜も絶対に連れてこようって思ってた」

ナオさんはただ思い出を聴かせるんじゃなく、ちゃんと現実に共有させてくれる。一緒に残るものをくれる。

「また来ようね」

約束をくれる。
はじまりをくれる。

叶うなら。永遠が欲しかった。
失うことを怖がらずにすむように。

愛は移ろっていくものだから。
今はここに在っても。
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