サヨナラ、セカイ。
「いつって言えなくてごめん。でも俺の残りの人生はぜんぶ沙喜にもらってほしい。人生の最期は沙喜に見守られながら笑って逝きたい。今の自分をきちんと終わらせられるまで、待っててくれないか」

そう言うと。ナオさんはわたしの左手を取り、薬指の付け根にそっと口付けた。

淡い微笑みを浮かべわたしを見つめる。ロマンティックなんて綺麗事で受け止めるよりずっと切実で。単純なプロポーズじゃないことは分かってた。叶うかも不確かな。あるいは奈落の底に独りで堕ちる羽目になるかもしれない。

そんな壊され方でもいい。

ただひたすらに愛し抜いてくれるなら。




“掛け金”をゆっくりと外してく。
扉を開く。

「・・・わたしの人生もぜんぶナオさんにあげる」





< 56 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop