悪役令嬢は執事見習いに宣戦布告される
なんと、イザベル様とお友達になりました。今でも信じられません。
実際に話をしてみて思ったのですが、イザベル様は噂ほど怖い方ではありませんでした。それどころか、私をかばって水を被るほど、慈悲にあふれた方です。
そして、これまでの嫌がらせの首謀者は、イザベル様の名を騙る別の方だということがわかりました。
こんなに優しい方が陰険なことをされるはずがありません。やるなら正々堂々と勝負されるでしょう。そんな気がいたします。
私が今まで疑っていた謝罪を口にすると、慌てて謝る必要はないとおっしゃいました。友達になりたいという私のわがままを快く受け入れてくださった後は、何やら悶絶されていたようですが、王宮御用達の紅茶でいただく午後のティータイムはとても楽しい時間でした。
翌日、私は寝坊しました。
高貴なイザベル様と友達になれたことが信じられなくて、なかなか寝付けなかったのです。早くしなければ、もうすぐ授業が始まります。慌てて走っていると、優雅に歩くイザベル様の姿を発見しました。
ですが、他の生徒の目がある中、私が気安く話しかけるわけにはまいりません。会釈だけをして通り過ぎたとき、後ろから声がかかりました。
「フローリア様。ハンカチを落としましてよ」
慌てて足に急ブレーキをかけて戻ると、イザベル様が女神のような微笑みでハンカチを差し出していました。恐縮しながら受け取ると、周りにいた生徒がひそひそと会話しているのが聞こえました。
「あ……ありがとうございます。イザベル様」
「ふふ、今日もいいお天気ね」
「そうですね」
そこで予鈴が鳴り、私は失礼します、と足早に去りました。
イザベル様はやはりお優しい方です。不注意で落としてしまったハンカチをわざわざ拾ってくださり、噂はあまりあてにならないと改めて感じました。
*
クラウドは私の幼なじみです。元々はうちのお得意様の貴族の息子で、珍しい本や食べ物をよく持ってきてくれます。
休日の今日も、家にやってきたクラウドは手土産のケーキを持ってきて、学園の様子を聞いてきました。どうやら私が嫌がらせを受けているのを知っているみたいです。
「嫌がらせっていっても、元庶民の私からしたら生ぬるいくらいだから、全然問題ないよ」
「本当に?」
「ええ。それに、学園で初めての友達ができたの」
私が頬をゆるますと、へえ、とクラウドが驚きました。
「よかったね。同じクラスの子?」
「ううん」
「じゃあ、別のクラス?」
「そう。クラウドと同じ特別クラスの方よ」
クラウドは目を瞬かせ、呆然としています。私が微笑んでいると、眉を寄せて困惑した顔で聞いてきました。
「……誰?」
「ふふ。あのね、イザベル様なの」
「……イザベルって、イザベル・エルライン?」
不思議そうに聞かれ、こくりと頷きます。
「そう。実はこの前、イザベル様のお屋敷に行って、いろいろお話ししたの。それでお友達になってくださいって言ったら、快諾してくださって。外国のお茶菓子もいただいて、楽しくお茶をしたの。……まあでも、立場とか周りの目とかあるから、学園では話すことも難しいけどね」
「ふうん」
あ、あまり信じていない顔だわ。でも事実だし。
それにしても、このケーキ、ふわふわで甘さ控えめで美味しい。クラウドは私の好みがよくわかっている。
実際に話をしてみて思ったのですが、イザベル様は噂ほど怖い方ではありませんでした。それどころか、私をかばって水を被るほど、慈悲にあふれた方です。
そして、これまでの嫌がらせの首謀者は、イザベル様の名を騙る別の方だということがわかりました。
こんなに優しい方が陰険なことをされるはずがありません。やるなら正々堂々と勝負されるでしょう。そんな気がいたします。
私が今まで疑っていた謝罪を口にすると、慌てて謝る必要はないとおっしゃいました。友達になりたいという私のわがままを快く受け入れてくださった後は、何やら悶絶されていたようですが、王宮御用達の紅茶でいただく午後のティータイムはとても楽しい時間でした。
翌日、私は寝坊しました。
高貴なイザベル様と友達になれたことが信じられなくて、なかなか寝付けなかったのです。早くしなければ、もうすぐ授業が始まります。慌てて走っていると、優雅に歩くイザベル様の姿を発見しました。
ですが、他の生徒の目がある中、私が気安く話しかけるわけにはまいりません。会釈だけをして通り過ぎたとき、後ろから声がかかりました。
「フローリア様。ハンカチを落としましてよ」
慌てて足に急ブレーキをかけて戻ると、イザベル様が女神のような微笑みでハンカチを差し出していました。恐縮しながら受け取ると、周りにいた生徒がひそひそと会話しているのが聞こえました。
「あ……ありがとうございます。イザベル様」
「ふふ、今日もいいお天気ね」
「そうですね」
そこで予鈴が鳴り、私は失礼します、と足早に去りました。
イザベル様はやはりお優しい方です。不注意で落としてしまったハンカチをわざわざ拾ってくださり、噂はあまりあてにならないと改めて感じました。
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クラウドは私の幼なじみです。元々はうちのお得意様の貴族の息子で、珍しい本や食べ物をよく持ってきてくれます。
休日の今日も、家にやってきたクラウドは手土産のケーキを持ってきて、学園の様子を聞いてきました。どうやら私が嫌がらせを受けているのを知っているみたいです。
「嫌がらせっていっても、元庶民の私からしたら生ぬるいくらいだから、全然問題ないよ」
「本当に?」
「ええ。それに、学園で初めての友達ができたの」
私が頬をゆるますと、へえ、とクラウドが驚きました。
「よかったね。同じクラスの子?」
「ううん」
「じゃあ、別のクラス?」
「そう。クラウドと同じ特別クラスの方よ」
クラウドは目を瞬かせ、呆然としています。私が微笑んでいると、眉を寄せて困惑した顔で聞いてきました。
「……誰?」
「ふふ。あのね、イザベル様なの」
「……イザベルって、イザベル・エルライン?」
不思議そうに聞かれ、こくりと頷きます。
「そう。実はこの前、イザベル様のお屋敷に行って、いろいろお話ししたの。それでお友達になってくださいって言ったら、快諾してくださって。外国のお茶菓子もいただいて、楽しくお茶をしたの。……まあでも、立場とか周りの目とかあるから、学園では話すことも難しいけどね」
「ふうん」
あ、あまり信じていない顔だわ。でも事実だし。
それにしても、このケーキ、ふわふわで甘さ控えめで美味しい。クラウドは私の好みがよくわかっている。