まるでSFのようだった
彼女は、僕と同じ部隊の同期だったのだと思う。
同じ年の、同じ日に、最前線に近い施設に連れてこられた同い年の奴らを、僕たちは仲間意識を持って、同期と呼んでいた。
“思う”というのも、僕はあまり周りを気にするタイプじゃ無かったし、彼女も目立つタイプの人間では無かったから。
[可愛い顔してるよな]と隣室の男子に言われるまで、僕は彼女の顔すら見たことが無かった。
出来れば見たく無かった。
同い年の少女が、平穏な日常の中で髪を伸ばして、ドラッグストアで化粧品を買ったり、スキンケアに精を出す反面、短く刈り上げた髪で、乾燥した肌や、ニキビが出来たままの彼女たちは、あまりにも痛々しかった。
ただただ僕らは、民衆を守る“救世主”であることを求められた。
それ以上にはなってはいけなかった。
当たり前の幸せを手に入れることは許されなかった。
酷く馬鹿馬鹿しい世界だった。