ヤンキーとお姫様
春の光に透けて亜麻色に見える長い髪
この前まで中学生だったのに
高校の制服が大人っぽくさせる
グレーのセーラー襟とスカートが風になびいた
「ちょっと!
一輝(かずき)、ついてこないで!」
家の近所まで来たところで
姫香が振り返ってオレに言った
「あー、ごめん…
でも、オレもこっちだし…」
「学校では絶対に話しかけて来ないでね!」
念を押された
「うん…
…
姫香が同じ高校来てくれて
オレ嬉しいな」
「たまたま一緒だっただけ!」
オレが通う高校は
この辺では1番の進学校で
たまたま一緒って言えるような
レベルじゃないはず
1年間だけど
姫香と一緒に通えるとか思ってたのに
甘かった
「うちの学校で
そんな格好してるの一輝だけじゃん!
ヤンキーと知り合いとか思われたら
友達いなくなっちゃう」
「ごめん…」
「だいたい、なんでそんな格好してんの?
友達できないよ!
今日だって、一輝ひとり浮いてたし…」
「うん…」
「中学の時は、めっちゃモテてたじゃん!
友達もいっぱいいたし…」
うん
モテた
高校入ってからもモテた
だから
この格好を選んだ
そしたら
誰もオレを選ばなかった
そしたら
姫香にも嫌われた
姫香には
嫌われたくなかった
オレは姫香のストーカーじゃなくて…
「じゃあね!
明日からも話しかけて来ないでね!」
「うん…」
家と家が隣の
幼なじみ
それから…
姫香が好き