パントゥーフル ~スリッパの乱~
翌朝、身支度してダイニングへ行くと、いつも通りに朝ごはんが並び、弁当まで用意されていた。

美樹は2日に1度くらい弁当を作ってくれる。
コレステロール値高めの僕が、昼に揚げ物や肉をあまり食べないようにと、魚や野菜の総菜を詰めてくれるのだ。総菜はたいてい前日の残りだけど、健康を気遣ってくれる弁当はうれしかった。

それでも、さすがに喧嘩の後の今朝だ。弁当はないだろうと思っていた。
美樹の顔色を覗うと、ポーカーフェイスだが、気持ちよそよそしい。
平静を装って「行ってきます」と声をかけると、ぶっきらぼうに弁当を渡された。

昼休み、少し遅めの時間に社員食堂へ向かう。
愛妻弁当と冷やかされたくなくて、いつも人がまばらになってから食べるのだ。

ふたを開けた途端、僕は唖然とした――。


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