眠る王子にお姫様はキスをする
銀髪の少女は腰まで伸びたストレートの髪をなびかせ、優雅に教卓の前に立つ。

「初めまして、御影雪です。少し前までイギリスにいました。といっても生粋の日本人なので日本語はちゃんと話せます!よろしくお願いします。」


クラス中がポカンとしているなか、


「まあ、色々不慣れなこともあるだろうからな。学級委員の如月!お前、学校案内よろしくな!ついでにお前の隣空いてるから、御影はそこに座れ。」


 担任の声に皆ハッとなるが今度は自分がクラス中の視線を集めてしまった。


 女子は、担任を睨み、男子は自分を睨んでくる。


 めんどくさいことになった……
こんな美少女がうちの学校に入ってくるってだけでも大変だってのに……

 うちのクラス?!隣?!案内まで?!?!

 余計に体調が悪くなりそうだと机に突っ伏していると肩をトントンと叩かれる。



 ん?と顔を上げれば転校生御影雪だった。



 「隣、よろしく!」と声をかけられた。


 「あ、あぁ。よろしく。」
 と体を正して御影の方に向き直す。

 よく見ればなんだか、見覚えある顔だ。


 こんな美少女会ったら忘れないはずなんだけどな……


これから大変になるぞと、諦めにも似たため息をつく。今日だけで何回ため息をつけばいいんだ…



「はい、もう1人転校生がいます。」


 担任の言葉に、皆の視線が教室のドアに一斉に集まる。


 ドアがガラガラと響く音とは正反対に、凛とした空気が入ってくる。
 すらっと伸びた背筋に高く一つに結んである黒髪はどこか武士を彷彿とさせる。それでいてハーフのような顔立ちで、良家のお嬢様感が滲み出ている。



 「結城ひなです。よろしく。」



…随分とサッパリした挨拶だが、これもまた、雰囲気通りの性格という感じで誰も何も言わない。


 「というわけだ。結城のことも頼んだぞ、如月。
それに悪いがお前の右隣空いてるからそこ結城の席にするからな。頑張れ如月。」


 クラスの雰囲気を予想していた通りとでもいうように少し苦笑い気味の先生を軽く睨む。
 今日で何回目になるかわからないため息をつく。



 『普通の人』だったら、別にいいんですけど。


 チラッと横目に両脇にいる御影と結城を見やる。

こんな美少女2人を横に置くとかどういう神経しているんだ……。そして学校は転校生のクラスをなぜ分けないのか。


 頭が痛み、お腹まで痛くなってきた。






  あ……ダメだこれ。






 そう思った瞬間、力が入らず雪崩れ込むように横に倒れていく。



 ガシッ 



 誰かに掴まれた気がするが頭にもやがかかり、そのまま意識を手放した。
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