兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~
「――――ああそうだ! 今日は俺、兎月にお土産があるんだ!」
「お土産?」
何だろうと思っていると陸は、持っていた鞄をごそごそ探る。そして中から、瓶のような入れ物に入った黒い液体と、何か小さな袋を取り出した。
「何が好きなのか分からなかったから、とりあえずコーラとポテトチップス買ってきた」
「コーラと、ポテトチップス……?」
何だろう……これをどうするんだろう? あまりに殺風景だから、この部屋に飾るのかな。でもあんまり可愛くない。
「え……? もしかして、コーラもポテトチップスも知らない?」
「うん、初めて見た」
私がそう答えると、何故か陸は目を見開いて驚いていた。だって仕方ない。月にはこんな物、無かったもの。
「昨日初めて会った時から思ってたんだけど……兎月って、ちょっと変わってるよな」
「そうかな……? 自分では分からないけど……」
「もしかして、ここに来る前は海外に住んでたとか?」
「…………凄く、遠い所にいたの」
「やっぱりそうなんだ……」
私の曖昧な答えに、陸は勝手に納得してくれたみたいだ。余計な事を突っ込まれないから、その方が都合がいい。だから私は、彼が勘違いしているのに合わせる事にした。