兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~
 その後は、一緒にポテトチップスを食べてコーラを飲んだ。ポテトチップスはパリパリしていて少し塩辛く、コーラは甘いけど口の中で何かがプチプチ弾ける不思議な飲み物だった。栄養があるとは思えないが、わりと美味しかったから毒にもならないだろう。

 飲み食いをしながら、陸は色々な事を話してくれた。

 陸が通う学校というのがどんな所か、面白い先生の事とか。昨日一緒だった勇樹って若い男の事も――――彼は学校で同じクラスの親友なんだそうだ。

 昨日、その親友に陸は置き去りにされてたけど……

 陸の話は私が知らない事ばかりでとても興味深く、お陰で人間の生活の事が少し分かったような気がする。

 話しに夢中になっていると、来た時は夕焼けだった陽が、いつの間にかとっぷりと暮れていた。部屋も暗くなっていたから、結構な時間が過ぎていたみたいだ。

 天井にあるかろうじて灯りの灯る電気のスイッチを入れると、陸はスマホで時間を確認していた。そしてそろそろ帰ると腰を上げた。昨日も見たあの、彼が鞄に入れている小さな長方形の板が、スマホというのも今日教わった。


「――――また来るよ、兎月」

「うん……」

「来られる日は、なるべく来るようにする。兎月の様子を見に……」


 陸は心配そうに困った顔で少し笑った。

 どうやら陸は、私が病気なんだと完全に勘違いしてくれたみたいだった。
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