兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~
「で、でも……兎月鬼は地上では長く生きられないって……」
「それは本当だけど、でも絶対、じゃない。まあもっとも、小動物なんかを食べてかろうじて命を繋いでる状態だけどね。この前は、ちょっと豪華に女子高生を食べたけど」
彼女の足元に、鳥か何かの羽が数枚落ちていた。そして、滴った血の跡……
私の視線に気が付いたのか、彼女は血の跡を足の裏でグリグリ擦って消そうとしたが、滲んで跡を付けただけだった。
「さっき、近くの小学校でちょっとね……空き家だと思ってたから、ここで食べたんだけど。でも、ウサギは逃がしてあげたわ。だって、共食いになっちゃうでしょ?」
彼女はそう言って、可笑しそうに笑った。
――――彼女は『美兎』と名乗った。
美兎は私よりひと月早く地上へ降り、繁殖の為に若い男を探した。だが、さあ食べよう! という寸前で逃げられてしまったそうだ。
それからまた、若い男を食べようと奮闘したが叶わず。今は小動物などを食べながら命を繋ぎ、若い男を探しているという。
「――――次に来る者たちの為に、無差別に食べたり出来ないでしょ? でもあたし、二人きりになるとか誘い出すとか、そーいうの下手みたいで。なかなか上手くいかなくて……」