兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~
 翌日のお昼過ぎ、私を呼ぶ声で目が覚めた。声の主は、陸だ。

 彼は珍しく慌てているようだった。

 いつもならまだ眠っている時間。外は晴天で、太陽の影響がまだ強い。だけど、重い体を無理に起こして陸を出迎えた。玄関を出てみると、彼は走ってきたのだろう。ハアハアとまだ息を切らしている。

 何をそんなに慌てているのか不思議だった。それに、陸はいつもこの時間は高校へ行っているはずなのに。


「――――良かった……! 兎月、無事だったか!」


 陸は私の顔を見ると、ホッとしたようだった。


「無事だったって……なに? いつも通り、ずっと寝ていたんだけど」

「いや、今日さ、学校で聞いたんだけど……昨夜、高校の隣にある小学校で、飼育小屋で飼ってた動物が殺されたらしくて……」

「動物……?」

「うん、ニワトリとかモルモットとか……何匹か血だらけの死体になってたって」


 ――――美兎の食べたやつだ!

 私にはすぐに分かった。昨夜、美兎は小学校から取ってきて食べたって言ってた。少しその場でも食べたのかもしれない。だからバレちゃったんだ。

 だけどそれは陸には教えなかった。当たり前だ。鬼の存在なんて、知らせてはいけない。


「そんな危ない不審者が出たから、この辺一帯の学校が午後から休校になって……それで俺、一人で住んでる兎月の事思い出して……だから……」

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