兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~
 どうやら陸は、私を心配して来てくれたみたいだった。

 ……人間って、不思議。それとも、陸が変わっているのかな。

 陸とは出会ってからまだそれ程日にちは経っていない。彼女でもないし、ただの友達なのにこんなに心配してくれるなんて。


「……大丈夫だよ、陸。こんな森の中まではきっと誰も来ないよ」

「そうかもしれないけど……でも心配で……犯人はまだ捕まってないから気を付けて!」

「うん、分かったよ」


 もしその犯人が、私と同じ鬼だと知ったら陸はどうするだろう。

 私が鬼だと知ったら……


 その後、陸はまだ心配していて暫く洋館にいると言ったが、それは断った。

 だって、いくら心配してくれても、私が陸の言う『危険不審者』に襲われる可能性はゼロだ。犯人は昨夜の美兎に間違いないし、もし他の人間だったとしても、鬼である私に何か出来るとは思えない。

 それに、まだ真昼間だ。眠くて仕方なかった。

 初めは陸もここに居ると言い張ったが、私が頑なに拒否し続けるのに根負けした。


「――――じゃあ、帰るけど……本当に、気を付けてくれよ?」

「うん、大丈夫だよ」

「……あ、そうだ。もう一つ、兎月に確認したい事があったんだ」

「なに……?」

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