兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~
 園内に入ると先ずは草食動物。鹿とかトナカイとか。角のある動物に、何だか親近感。あとは凄く大きなゾウやキリン。鼻が長い方がゾウで首が長い方がキリン。

 地上は不思議な動物ばかりだ。

 草食動物エリアの終わりは、ちょっとした広場になっていた。飲食出来るお店があり、小動物と触れ合える場所も。モルモットにヤギにウサギ。

 私と同じ、ウサギ……


「――――中に入ってみる?」


 ショーウィンドウ越しに中のウサギを見ていたら、隣で陸が声を掛けてきた。どうやら夢中で見ているのだと勘違いしたみたい。


「中に入れば触ったり出来るんだって。勇樹だちはもう入ったから、俺たちも行ってみる?」

「うん!」


 私の様子を見て、いつも気遣ってくれる。陸は優しい……


 中は結構広くて、それぞれの動物でエリアが分けられていた。勇樹と美兎はヤギの所で餌なんてあげている。

 陸は真っ直ぐにウサギのエリアへ向かってくれた。私がずっとウサギを見ていたのに気が付いていたんだ。

 係員の人に説明を受けて、一匹の黒いウサギを抱っこさせてもらった。フワフワで温かくて……何故だか月の事を思いだした。


 お母さん、どうしてるかな……また、会えるのだろうか……


 何だか涙が出そう。これが里心というものなのかもしれない。
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