兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~
それを回避する為には、人を食らう事。若い男の血肉には、子を宿し鬼の力を回復させられる、それだけの栄養があるのだとお母さんは言った。
地上へ降りたまま、帰らない者がいるとは聞いた事がある。でもそれは、事故にあったりとか何か理由があるんだと思っていた。帰らないけど、そのまま地上で人の振りをしてくらしているんだと。
実際、子供の頃はそう聞かされていた。眠る前のおとぎ話として。
だけど本当にそれが、おとぎ話だったなんて……
知らない間に、手に汗をかいていた。それをぐっと握りしめる。体中が強張っているのが分かった。
だって……知らなかったんだもの。まさかこれが、死出の旅になるかもしれないなんて…………
そんな私の様子が分かったのか、お母さんはゆっくりと近づくと、柔らかく抱きしめてくれた。
『――――大丈夫……兎月、貴方はちゃんと出来るわ、お母さんの娘だもの。いい? 人間には情けを掛けてはダメ。ただの食料だと思いなさい。そうすれば、簡単よ』
ただの食料……
私がお母さんの腕の中で頷くと、もう一度ギュッと抱きしめてくれた。
◇
地上へ降りたまま、帰らない者がいるとは聞いた事がある。でもそれは、事故にあったりとか何か理由があるんだと思っていた。帰らないけど、そのまま地上で人の振りをしてくらしているんだと。
実際、子供の頃はそう聞かされていた。眠る前のおとぎ話として。
だけど本当にそれが、おとぎ話だったなんて……
知らない間に、手に汗をかいていた。それをぐっと握りしめる。体中が強張っているのが分かった。
だって……知らなかったんだもの。まさかこれが、死出の旅になるかもしれないなんて…………
そんな私の様子が分かったのか、お母さんはゆっくりと近づくと、柔らかく抱きしめてくれた。
『――――大丈夫……兎月、貴方はちゃんと出来るわ、お母さんの娘だもの。いい? 人間には情けを掛けてはダメ。ただの食料だと思いなさい。そうすれば、簡単よ』
ただの食料……
私がお母さんの腕の中で頷くと、もう一度ギュッと抱きしめてくれた。
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