兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~
 鳥のエリアは広い池になっていた。フラミンゴやコウノトリなどの水辺に生息する鳥がいる。その奥には熱帯雨林を模した植物園があり、色の奇麗な鳥が見えた。

 私は美兎に言われた通り陸一人を連れ出し、美兎は勇樹と肉食獣のエリアへ。一通り回ったら、また広場で落ち合おうという事になっている。


 夕方から来たから、辺りはもう日が落ちていて空が暗い。園内はライトアップされているから見るのに不便は無いが、昼間に活動する動物たちはもう眠そうだ。私の体の方は随分楽になったけれど。

 エリアに入ってすぐ。フラミンゴが水辺に佇む場所で、柵越しにそれを陸と眺めていた。

 ピンクのフラミンゴが一本足でじっと立っている。何か理由があって片足で立っているらしいけど、その姿は珍妙で興味をそそられる。色がピンクなのも可愛い。

 ……美兎は、どうしてるかな。もう勇樹を食べちゃったかな。

 でもどんなに意識をフラミンゴに持っていっても、やはり彼と彼女の事を考えてしまう。情けなんて必要ない。このフラミンゴが生きる為にエビを食べるのと同じ事、何度もそう考え納得しようとした。

 でも……陸は……

 ちらりと隣の彼の様子を盗み見ると、陸は何故かフラミンゴを見ながらニコニコと微笑んでいた。いくら一本足で立っている姿が珍妙でも、そんなに笑う程面白くはないのに。
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