兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~




 まだ鳥エリアに入ったばかりだったから、肉食獣エリアはすぐだった。だけど、柵の向こうにトラやライオンがいるが、二人の姿は見当たらない。カップルは何組かいるけれど、誰も違う。

 何処へ行ったんだろう……美兎はどうするって言ってたっけ……


「――――大丈夫か? そんなに急がなくても、進んでいけばそのうち会えるだろ」


 ハアハアと息を切らしながら立ち尽くす私に陸が声をかけた。


「違う……そのうち、じゃダメなの……!」


 今すぐに二人を見つけないと! もう事は起こってしまっているかもしれないから……

 私の異常な剣幕で陸も何か感じたんだろう。彼もキョロキョロと辺りを見回しながら、二人の姿を探し始めた。


「……ダメだな、ここにはいないみたいだ。もっと先に行ってるのかもしれない」


 今度は陸が私の手を引いて少し速足で歩き始めた。この先はクマがいる場所だ。そこにいるといいのだけど……


 クマがいる柵の前まで来ると、また私たちは足を止めて辺りを見回す。しかしやはり、二人の姿は見つからなかった。

 探しながら少し進むと、白くて四角い建物に行き着いた。それは、白クマがいる建物だと陸が教えてくれた。寒い地域にいる真っ白なクマなんだそうだ。

 この中にいるかもしれない、そう考えて建物へ向かった。すると――――
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