兎月鬼~とげつき 月が奇麗ですね~


「大声出してごめん……でも、本当に待って欲しいんだ。頭が整理出来たらまた来るから、それまで……ここにいて欲しい……」


 陸が何を考えて、何を整理したいのか、私には分からない。だけど……


「……分かった、それで陸の気が済むのなら」


 頷いてそう答えると陸は帰っていった。一口も飲まなかったコーラと食べなかったポテトチップスを残して。

 私は手を伸ばしてポテトチップスを一枚取る。少し齧ると、塩辛かった。

 立ち上がり窓辺で夜空を見上げると、そこには星が幾つも瞬いていた。だけど月の姿は見えない。そういえば今夜は晦日だ。月が姿を隠してしまう夜。だからいくら待っても月は現れないだろう。

 私は手にしていたポテトチップスをもう一口齧った。

 やっぱり、塩辛い……

















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