抑圧的ラブソング

夢は音楽で食っていくこと、だったはずなのに、どうしていつの間にか忘れて、諦めていたんだろう。


いまのわたしは、ただの一般企業に勤めるOLできっとそのまま退職を迎えるんだとおもう。


彼にはあったそれが、わたしにはなかったからなんだろうか。


それとも、夢を諦めずに頑張っていたら、いつか、その夢が叶ったと言うんだろうか。


あのとき、同じ夢を志していたはずの仲間たちはもういない。

みんな、諦めていってしまった。


夢を諦めたわたしとは反対に、彼は夢を叶えて、いまは遠くに行ってしまった。


本当は、同じところに行きたかったのに、わたしには許されなかったから。


ずっと、ずっと、あの人が羨ましくて仕方なかった。


羨ましくて、何度も手を伸ばしたのに、同じ場所に行けるわけではなかったから。


伸ばすことをやめた。


あんなにすきだったのに、音楽も遠ざけて、耳を塞いだ。


こんな、ひどい嫉妬、あの人に知られたら嫌われるとおもったから。


だから、彼と離れようとおもったのに、こんなところに来てしまって、わたしはバカ以外の何者でもない。


未練はあの部屋に置いてこようと決めていたはずなのに、背負っているアコギも、着拒にしなかった電話も、あの日彼が座っていた場所に座っている自分も、ぜんぶ、未練の塊じゃないか。


バカだな。本当に。

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