#OVER TIME




ザバッ…ーー!!!

ジャンプジャブからの目にも止まらぬ早さのロッカーモーションそして翔真を振り切って沈めた想汰のプレーに、
「「わぁぁああああっ!!」」
この日一番会場中が沸いて、立ち上がった。

スピードが違う、キレが違う。
高さでは明徳が勝っていたものの、チームとしての完成度が全くと言っていいほど違った。

「これが高校全国か…」

エース便りのオフェンスではなく、全員でディフェンスからのいいオフェンスリズムを作る。ボールを貰って開いたら誰でも確実にい抜く。そしてそのシュート率の高さがずば抜けていた。

誰がエースではなく、コートに立つ全員がエースだ。

全く歯が立たない明徳男子は、思うように得点も取れずターンオーバーが目立ち30点差をつけられ大敗を期した。


勝ったはずなのに、なぜか想汰が一ミリも喜ばしい顔をしていないのは、優勝しか目指していないからだと思ったが、両者を称える翔真と握手を交わした時、その理由が分かった。


「成長が足りないな。翔真。」

大きく重いため息を一つ吐いた。

「…」
「どこ目指すんだ?このままじゃ中途半端に終わるぜ。何もかも。」

愛知時代に一度は想汰と不破と一緒に全国準優勝は果たしたものの、それ以来翔真自身全国タイトルは無縁だった。
冷たく厳しい忠告にも似た言葉を残して優勝候補軍団は去っていった。

「翔…」
声をかけようとした結城が翔真の表情を見てハッした。

珍しく何か納得いかないような顔をしていたからだ。

それは本当に珍しいことだった。



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