#OVER TIME
「お、翔真。来てたか。」
「はい。」
「お前を煽っておきながら、あんま活躍できずにこんなこと言うのあれだけど…」
「いえ、全然そんなことは」
「お前も立てよ。この舞台。」
「…!」
驚く翔真は思わず声が出なかった。
「お前なら絶対立てるはずだぜ。今の何百倍、何千倍努力すればな。」
まるでそう望むかのようにお世辞でもなんでもない、本気の眼差しで見るその想汰の視線に言葉が返せないでいると、
「そんなの明徳では無理…」と言いかけ立ち上がった匠を振り切り、
「そんなのコイツに出来るわけねぇだろ!!!」
急に声を絞り出すように大声を出す嵐。
「嵐…」
異常な反応に驚く想汰に、
「想汰さん何言っちゃってるんすか?コイツが日本代表?なれるわけないでしょうが。この俺の足元にも及ばない奴が」
「いや、湊はすげー奴だよ。俺初めてミニバスで会った時衝撃受け…」
「ふざけんな!!!コイツが俺らと同じ舞台だ?!覚悟しとけよ!!!」
グイッ!と翔真の胸ぐらを勢いよく掴みかかり、
「お前がこの舞台に立つ時は、この俺を引きづりおろした時だ。この不敗神話を誇るこの俺をな。」
敗北を知らないその純真無垢な熱い目は、鋭さを増した凶器のようだった。
平和主義者の翔真は何も言わずに、あえて言わずにか、立ち尽くしていたが、
「おーい、喧嘩すんなよ。マスコミもまだいんぜ?」
熱い展開にやれやれと健が手を叩いてその場の温度を下げさせると、
「…桐生さん、未茉は俺と付き合ってます。彼女に手を出すのは金輪際やめて頂けますか?」
「…あ?!」
突然口を開いたかと思えば、出た未茉の名前に驚いて振り向く。