都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「遠藤さんって抱き心地いいね」


次に気がついた時には立ったまま佐久間に抱きしめられていた。
……ここ、どこだ?たぶん私の家じゃない。
玄関こんなに広くないもん。


「こっち見て」

「……」

「酔うともっとかわいい」


立つのがやっとの私を抱きしめてまたキスをしてきた。
今度はねっとりした深いキス。
あ、ヤバい…この流れはちゃんと拒否しないと。
けど腕に力が入らない。
それに……なんで嫌じゃないの?


「このままベット行っていい?」

「やだ、って……言ったら?」

「は?このまま帰すわけねえじゃん」


ゾクゾクするような艶のある笑みを見せた佐久間は軽々と私を抱き上げた。
ああ、ダメだ。ダメだと思うのに流されてもいいなんて投げやりな自分がいる。

ベッドのへりにそっと降ろされた私はそのまま押し倒された。
まったく抵抗しない私を見て佐久間は唇にキスをする。それから徐々に舌を這わせて首筋を舐めた。


「んっ……」

「キスで感じてんの?」

「ちが、う……」

「ふぅん、違うんだ」


「嘘つき」佐久間はそう言って笑う。
見たことのない色っぽい笑みに心臓が高鳴る。
完全にこいつのペースに飲まれた、そう思った時はもう遅かった。
< 11 / 263 >

この作品をシェア

pagetop