都合のいい女になるはずが溺愛されてます
身体を洗い流して佐久間の隣に腰を下ろす。
朝の露天風呂もいいな。朝日が差し込む温泉は夜と違って気持ちいい。


「風呂上がったら朝食に行く?」


提案されて佐久間の方を見たけどすぐ目を逸らした
流し目の佐久間は朝には刺激が強い。


「メイクしてからでもいいですか?」

「いいけど俺はすっぴんでもいいよ」

「嫌です、佐久間さん顔がいいから私がすっぴんだと釣り合わないじゃないですか」

「仁奈そういうの気にするタイプだった?釣り合うとか釣り合わないとか」

「……あんなブッサイクな寝顔撮られたら自信なくなります。
記憶から抹消したいので早くあの写真消してください」


釣り合う云々の話ではなく、一刻も早くあの写真を消して欲しい一心だ。
しかし佐久間は悪びれもせず口の端を上げた。


「じゃあ今度はかわいく撮るからそれで帳消しにして」

「いやだから、寝顔消してください」

「あれ見ると元気になるから消さない」

「元気にならないでしょ、むしろ萎えますって」

「萎えねーよ。あの顔で寝てても全然襲える」

「そういう話じゃなくて……」


不毛な展開になってしまったのでもう諦めることにした。
立ち上がると「ごめんって、今度俺の寝顔も撮っていいから」と言われたのでいりませんとお断りしておいた。
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