都合のいい女になるはずが溺愛されてます
金曜日、佐久間は岡田くんと飲んできた帰りにウチに寄った。


「ただいま〜」

「……おかえり」


自分の家じゃないのにただいまって変なの。
一応挨拶を返してあげたらニヤニヤしながら私が座ってるソファーに近づいてきた。


「まだおかえりって言うの恥ずかしい?かーわいい」

「臭いから早くお風呂入ってください」

「えー、めっちゃトゲトゲしてるじゃん。どしたの」


酔っている佐久間はいつもより表情豊かでかわいい。
頬が緩んでしまいそうだから気が張ってキツい言葉が口から出てしまう。


「生理、来ちゃったんです」


とりあえず素直になりきれないのは生理のせいにしておこう。
大概な理由で誤魔化したら、真に受けた佐久間がしゃがんで目線を合わせてきた。


「俺帰った方がいい?」

「嫌です、明日佐久間さんにオムライス作るって決めたんです」

「……そこは素直なんだ」

「なんで笑ってるんですか」

「どんどんかわいくなるなと思って」


不意打ちで笑われて、感情を抑えきれなくて、とっさたソファーに置いてあったクッションを佐久間の顔に押し付けた。


「照れ隠し下手くそかよ。まあいいや、シャワー借りる」


ところがクッションを押しのけて現れたのはあどけない少年のような笑顔。
何なの、その満面の笑み。刺激が強いからやめてよ。
こんなんじゃいくつあっても心臓が足りないから。
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