都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「仁奈、これあげる」


お風呂上がりに首にタオルをかけたまま小さな紙袋を差し出してきた佐久間。
え、よくデパートで見かけるブランドの紙袋……急に何?
「開けて」というので見たら、中に入っていた箱に小さくハンドセラムと書かれていた。


「え、なんですかこれ」

「プレゼント。手、気にしてたみたいだから」


そんな話したっけ。
もしかして心と比べられそうになって手を引っ込めた時のこと?
確かに少しかさついていて、お世辞にも綺麗な手とは言えない。


「え、ありがとう、ございます……」

「塗ったげるから手貸して」


状況を理解できてないのに佐久間は両手を使ってそれを手に塗り込んでくれる。


「いい匂い……」

「ね、俺もこの匂い好きだから毎日つけてきて。ホワイトリリーって言うんだって」

「なんで私に?」

「仁奈っぽい匂いだなと思って」

「私ってこんなイメージですか?」

「最初はツンツンしてるけど時間が経つにつれて柔らかくなってくる感じ」

「なんですかそれ」

「今はユリの匂いが強いけどしばらくしたらちょっと匂い変わってくるよ」


優しく触れてくる佐久間はもう片方の手も塗り終わると、上目遣いで口を開いた。


「で、前川さんと話してた『引っかかったクズ男』って俺のこと?」
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