都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「……」


その質問が投げかけられるとは思ってなかった。頭が真っ白になって答えられない。
やっぱりあの会話聞こえてたんだ。
それならそうと、なんで今聞いてくるの?


「クズは過去形ね。今は仁奈だけ」

「いつまで私だけでいるつもりですか?」

「んー、いつまでだろう。俺もわかんない」


分からないと言いながら指を絡めてきて恋人繋ぎをする。
だから、調子狂うから過度なスキンシップはやめてよ。


「……佐久間さんって最後に彼女いたのいつですか?」

「えー、大学の時?けど半年も続いたことない」


恥ずかしさを逸らすために別の話を持ちかける。

半年か……そういえば佐久間とこういう関係になってそろそろ半年だ。
とは言っても、私たちは付き合ってないけど。


「どしたの、急にそんなこと聞いてきて」

「別になんでもないです」

「仁奈って分かりやすー」


あ、また『別に』って言っちゃった。
口癖だから仕方ないけど佐久間は本当に私の心情に敏感だ。


「かわいいねぇ、単純で」

「うるさいです、バカにしないで」

「バカにはしてねーって。かわいがってんの」


過去の女について尋ねるなんて、後腐れしそうでまさに佐久間が嫌いな質問なのになんでご機嫌なの?
その理由は半年経っても分からなかった。
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