都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「てかさ、6月祝日ないのだるいね」

「そうですね」


脈絡のない会話でも佐久間となら楽しくて。


「ということで、6月入って1週目の土曜予定空けといて」


こうやって不意に埋まる予定が嬉しくて仕方ない、なんて。
佐久間のために週末はずっと空けてるってことは絶対本人には言わないけど。


「カニですか?」

「どんだけカニ楽しみなの。残念ながらそっちじゃねーわ。
行きたいって言ってたろ、遊園地」

「覚えてたんですか!?」

「そう、俺偉いでしょ?」


しかも、だいぶ前に言った私の願望を覚えてくれていた。
なにそれ、どこまで私を惚れさせれば気が済むの?


「今なら心から尊敬します」

「今ならってなんだよ、常に敬えよ」

「クズ男だった時点で常時は尊敬できません」

「それは一理ある」


絡めていた指を離して、その手で今度は頭を撫でてくる。
佐久間の手にもついたホワイトリリーの香りが鼻腔をくすぐった。


「ねえ、仁奈。俺がこのままずっと仁奈だけだったらどうする?」
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