都合のいい女になるはずが溺愛されてます
ひとつめのアトラクションを楽しんで出口から出てきたら、カチューシャやヘアバンドをした女の子たちとすれ違った。
……佐久間、ああいうのつけるの嫌がるかな。


「佐久間さん」

「はいよ」

「こういうテーマパークではしゃぐのはアリですか?」

「好きにすれば?」

「……あの、被り物とか、一緒にしてくれますか?」


勇気を出して言ったら眉間にしわを寄せて怖い顔をされた。
え、そんなに嫌?言わなきゃよかった。


「仁奈そういうキャラだった?」

「嫌なら大丈夫です。困らせてすみません」

「嫌じゃない、ごめん照れ隠し。あんまりにかわいいこと言うからニヤけないように必死で」


怖い顔をしたと思ったら満面の笑みで手を繋いできた。
その笑顔は愛想笑いじゃないから、佐久間の言ってることは本当になんだと思う。


「今日の仁奈、心臓に悪い」


でもそれはこっちのセリフだ。私なんていつも佐久間に翻弄されてるのに。
そんなこと言われたら、期待を超えて自惚れてしまう。


「ねえ、もう手を繋いでもそんなに緊張しない?」

「言ったら意識するからやめてください」

「はーい」


自惚れると余計に好きだって実感するからやめてほしいのに。
けど今日くらい彼女気分でもいいかなと思った。
< 143 / 263 >

この作品をシェア

pagetop