都合のいい女になるはずが溺愛されてます
こんな切実に引き止められたのは初めてだった。
驚いて動けない。耳元で佐久間の吐息を感じてビクッと肩が震えた。


「今日泊まっていかない?」


囁かれたフレーズを理解して胸が熱くなる。
そんな言い方されたら、断れるわけがない。


「なんかこう……余韻が欲しい。このまま別れたくない」


そう言いながらくるっと身体を反転させられ、正面から抱きしめられる。


「嫌なら振りほどいて帰って」


佐久間の匂いとぬくもりがじわじわと感覚を侵食していく。
ねえ、拒否するわけないって分かって言ってる?
嫌というほど幸せと快感を教えこまれた男を拒絶なんてできない。


「……分かってるくせに」

「その言い方はずるいわ」


でも意地が邪魔をして素直に頷くことができない。
佐久間はそんな私の頬に指を滑らせ優しくなでる。
いつもと違う艶を秘めた笑みにゾクゾクする。


「先に言っとく、無理させたらごめんね?」


そう言うと佐久間は乱暴に私の唇を奪った。
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