都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「仁奈、仰向けになって」


ところがしばらくして、向かい合わせになるように指示された。


「や、ッ……!」

「やっぱこっちがいい」


いやらしい音を立てその体制で佐久間を迎え入れる。
……これじゃ顔が見えちゃう。見られたくなくてすがりつくように抱きついた。
佐久間は私の背中に手を回し、抱きしめながら求めてくる。

強い快感を覚えると気持ちがあふれる。
好きって言えたら幸せなのに。

だけど言えるはずがなくて、たった二文字の言葉を噛み殺した。



「……仁奈、元気ないけど疲れた?」


終わってからシャワーを浴びて、下着を身につける。
私が服を着る様子を、佐久間は少し不安そうな顔で見ていた。

なんで分かるの?
些細なことを勘が働くのは、ひょっとして私に好意を寄せてるから?

……いや、自惚れも大概にするべきだ。
佐久間を好きでいること、その気持ちをずっと心に秘めておくこと。
それにもう耐えきれないなら、ここではっきり言わなきゃ。

報われないのは最初から分かってた。






「佐久間さん、この関係はもう終わりにしませんか」

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