都合のいい女になるはずが溺愛されてます
佐久間の瞳が揺れる。きっと彼にとっては青天の霹靂。
だって私から別れを告げるはずないって、心のどこかで甘えてたでしょ?
好意を寄せられてると分かって付き合ってくれないのは、孤独の寂しさを埋める都合のいい女が欲しかっただけでしょ?

ねえ佐久間、なんとか言ってよ。
だけど佐久間はただ、身動きせずに私の目を食い入るように見つめていた。
その瞳の奥の感情はさっぱり分からない。


「なんで?」


長い沈黙の後、それだけ。
確かに立場を逆に考えたら、身体を重ねた後に別れ話なんて、急展開すぎてわけが分からないと思う。
けど、私はずっと前から苦しかったよ。


「……私があなたのことを好きになってしまったので。割り切った関係なんて無理でした」

「……」


ほら、黙り込むでしょ。
それが佐久間の答えなんでしょ?

しかし佐久間は納得のいかない顔をしたかと思うと「あのさ」と声を発した。



「仁奈の中で俺と付き合うって選択肢は全くない?」
< 150 / 263 >

この作品をシェア

pagetop