都合のいい女になるはずが溺愛されてます
想定外の発言に開いた口が塞がらない。
どういうこと?佐久間の中ではその選択肢が存在してるの?


「てか俺、割り切った関係でいようなんて言った?」


これで本当に終わりだと思ったのに、佐久間は終わらせてくれなかった。
状況が理解できなくて棒立ちの私に近づいてくる。


「この際だからはっきり言うわ。仁奈、こっち向いて」


こっち向いてと言われてもまともに視線を合わせられない。
だってどんな顔して見ればいいの。

すると佐久間は私の手首を掴んでぐい、と引っ張った。
……こっち見ろってこと?
恐る恐る顔を上げたら言葉を失った。
佐久間が優しく笑っていたから。



「あやふやにした俺も悪いけど、好きだよ」



私が言えなかったその二文字を言葉にされて戸惑った。
そんなはずない、この恋は一方通行だから。

佐久間が本気の恋なんてするわけない。
分かってたからこんなに悩んでこんなに苦しい想いをしたのに。

今までの私の葛藤はなんだったの?
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