都合のいい女になるはずが溺愛されてます
嗚咽が止まった頃、やっと佐久間から解放されて口を開いた。


「本当に私のこと好きなんですか?」

「俺なりに愛情表現してたつもりだけど」

「恋愛感情じゃなくて好奇心なんじゃないですか?」

「は?」

「私があなたに落ちないから、物珍しさに好奇心を抱いたんじゃ……」


泣くほど嬉しかったのに、冷静になると疑いの気持ちが出てきてしまう。
佐久間は「……はぁぁ」と深くため息をついた。


「じゃあ何、オトモダチから始めたいの?やってることはもうコイビトと同じじゃん」


佐久間の態度に失敗したと思った。
なんであまのじゃくなことばかり言ってしまうんだろう。
佐久間の前で素直になるのがまだ怖い。

冷めた目線が怖くて顔をあげられずにいると、ぽんぽん頭をなでられた。


「まあ、俺も本気の相手にこんなダサい告白の仕方は嫌だ。
今度会った時スマートに告白するので考えておいて」

「……さいですか」

「分かった?」


念を押すように顔を覗き込んできたので小さく頷いた。
告白すると改めて言われたら照れる。


「とりあえず今日は泊まって。俺がいかに本気か教えたげる。もっかい風呂入ろ」

「明日絶対目が腫れるから嫌です」

「むしろ見てみたいからいいよ。いろんな仁奈知りたい」


ゆるっと手を繋いできたから抵抗したのに、言いくるめられて敵わない。
結局こうやって流されちゃうんだけど、それも案外悪くない気がしてきた。

寝顔がかわいいとか、目が腫れてるの見てみたいとか言う物好きな男、佐久間くらいしかいないだろうから。
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