都合のいい女になるはずが溺愛されてます
今日で終わりだと諦めていたのに、これからも手を繋いでくれるんだと思ったら、またうるっときてしまった。

佐久間は泣きすぎて目が真っ赤であろう私を見てニヤッと笑う。


「あのさ、泣いてると興奮するからやめて」

「最低ですやっぱり帰ります」

「いやだ、こっちおいで」


恥ずかしくて方向転換したら後ろからホールドされた。
問答無用で脱衣所に連れていかれ、さすがに観念した。


「自分で脱ぐのと俺が脱がすの、どっちがいい?」

「自分で脱ぐに決まってます」

「つまんねー」


つまらないと言いながら佐久間の口元が楽しそうに弧を描く。
その笑顔があまりにも綺麗で見とれてしまう。
すると「なにぼーっとしてんの?脱がしていい?」と服を引っ張ってきたので慌てて風呂場に直行した。

お湯を湯船に溜めながらお互いの髪を洗って、ちょうどいい湯量になったころ一緒にお風呂に入った。


「仁奈が泣いたのはビビった」


ふう、と息をついたら佐久間が口を開いた。
何、どういう意味?


「私だって人並みの感情はあります」

「そっちじゃなくて、泣くほど俺の事で悩んでたんだと思ったら嬉しくて」


私の恋心がついにバレたのは非常に恥ずかしい。
でも好きなのは本当だから今更隠しきれない。
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