都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「やっぱり俺のせいで機嫌悪い?」

「大したことじゃないので。態度が悪くてすみませんでした」

「大したことないっていうなら理由教えて」


妬ましくて怒りました、とは言えなくて部屋に戻ろうとしたけど手首を掴まれた。
6月の湿った熱気に晒されたその手はすごく熱い。


「離してください」

「教えてくれるまで離さない」


どうにかこの状況を切り抜けようと思ったけど、佐久間の目を見て考えを変えた。
真剣な眼差しを前に、これ以上意地を張るのは大人気ない。


「………佐久間さんが、私に告白するって言ったくせに白井さん口説いてたから」


それ以上でも、それ以下の理由じゃない。
たったそれだけで冷たい態度を取ってしまった。

予想外の回答だったと思う。
佐久間は「え……」と一声だけ反応を示して固まってしまった。


「えぇ〜、嫉妬?マジ?」


ところが次の瞬間、満面の笑みを私に向けてきた。
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