都合のいい女になるはずが溺愛されてます
え、なんで笑ってるの?
仕事の話だったかもしれないのに嫉妬するなんて、こんな女めんどくさいだけじゃん。


「……嬉しい」

「は?」


佐久間は笑顔を保ったまま一歩近づいて、私の頬に手を添える。


「へえ、俺があいつと話してたからヤキモチ焼いてんの?なにそれ、かわいい」


爽やかな笑顔は意地悪な笑みに変わって、その手で頬をぷにぷにつねってくる。


「バカにしてます?」

「あいつ結婚すんだって」

「へ?」


あいつって白井さんのこと?
佐久間に振られてから半年しか経ってないから、その発想には至らなかった。


「白井、結婚するらしくて。今日珍しく向こうの方から話しかけてきてさ。
『あんたみたいなクズ、死ぬほど嫌いだけど、あんたのおかげでいい男と出会えた』って」

「ああ、なんだ……」


安堵の言葉が口から出てきて、あわてて口を塞いだ。
なんだって、安心してるみたいだ。
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