都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「でも白井には、好きな子できたからもうクズじゃないって言った」

「そしたら白井さんはなんて?」

「『あたしの知ったことか』って笑われた」


なんだ、本当に勘違いだったんだ。
安心した反面、早とちりした自分が恥ずかしくてキッチンに向かう。

佐久間にもらったケーキを冷蔵庫に入れて、汗をかいたであろう佐久間のために冷たいお茶をグラスに注いで渡す。


「仁奈も嫉妬するんだ」

「佐久間さんだから余計心配なんです」

「じゃあこれからはちゃんと向き合うから、嫌なことあったら言って」


向き合おうとしてくれる佐久間の顔が直視できない。
たぶん、汗ばんだ首筋に色気を感じたせい。

落ち着かない心をどうにかしようと玄関から部屋の中に移動する。


「今日は嫌な思いさせてごめんね?」

「別に私の勘違いだったからいいです」

「別にって言ってる時点で説得力ねーわ」


ソファに座ったら佐久間も隣に座ってきて、目の前のテーブルにグラスを置く。
その中で揺れるお茶をなんとなく見ていたら視線を感じた。
顔を上げたら目が合って、佐久間は私が一番好きな優しい笑い方をした。



「で、俺ら付き合う?」


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