都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「バカみたいに仁奈が好きなんだと思う」

「余裕な表情ムカつきます」

「えぇ〜?」


甘ったるい言葉に酔ってしまいそうで冷たく対処する。
強がる私をよそに、佐久間はゆるく抱きついてきた。

ツンケンしてるくせに、いつものくせでちゃっかり背中に手を回してしまう。
ああもう、こんなことしたら佐久間のこと好きってバレバレじゃん。


「女はね、仁奈が寝込んだ辺りから会わなくなって、水族館行った頃には全部切った」

「浮気性は治らないと思います」

「浮気ってより、俺今まで本気の恋愛したこと無かった。
『あれ?俺今までの恋愛全部お遊びだったわ〜』って本気になって初めて気づいた」


耳元でくすぐったい佐久間の声。恥ずかしいのにずっと聞いていたいこの矛盾が心地いい。


「すっげー楽しくて、もどかしくて苦しい。恋愛って矛盾がすごいね」


ふと体を離して、同意を求めるように顔をほころばせる佐久間。
気がついたら私も笑っていて、ああ私もこの人が好きだと痛感した。
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