都合のいい女になるはずが溺愛されてます
18時30分。退勤時間を30分すぎてやっと清掃が終わった。
コケは綺麗に取り除いたしガラスも磨いた。これなら中の熱帯魚が綺麗に見えるし文句言われないはず。
「まだやってんの?」
突然聞こえたのは佐久間の声。振り返ったら少し距離を保った状態でこっちをじっと見ていた。
なに、その目。どういう感情?
「アクアリウム、社長が好きなんです。景観損ねて怒られるの総務だから言われる前にやっておこうと思って」
「仁奈って変わってるよね」
「はい?」
普通に返答したけど、下の名前で呼ばれて嫌な気はしなかった。
「ウチの会社の総務ってやること少なくて楽なのになんでいっぱい仕事引き受けんの?」
「……性分でしょうか?」
「いや知らねえけど」
質問を質問で返したら「おもしれー」と無邪気に笑われた。
なんだこの人、まったく掴めない。
「ねえ今度デートしよ」
ほら急にデートとか言い出すし……デート!?
「なんでですか?」
「気になってる子とデート行くのに理由いる?」
気になってる子、ではなく利用できそうな女、でしょ?
それにここは会社の玄関だからいつどこで誰に話を聞かれるか分からない。
早く会話を終了させないと。
「検討しておきます」
「うわ、それ絶対いい返事くれないやつだ。
じゃあ連絡先交換しよ」
「はぁ?」
ところが会話は終わるどころか別の方向へ進む。
なになのこいつ、こんな可愛げのない女のどこがいいの?
とにかくたくさんいるであろう女の一部になるのはごめんだ。
「嫌です」
「あっそ、じゃあ総務課の人に教えてもらお」
「え……」
「さすがに総務課は仁奈の連絡先知ってるよね?」
そんなことしたら『佐久間があの愛想の悪い総務にまで手を出した』と噂になってしまう。
それは避けたい。
「ほんといじわるですね」
「ん、その顔かわいい」
仕方なくポケットからスマホを取り出して連絡先を交換することにした。
いじわるだと悪態ついたのに佐久間は満足気だった。
コケは綺麗に取り除いたしガラスも磨いた。これなら中の熱帯魚が綺麗に見えるし文句言われないはず。
「まだやってんの?」
突然聞こえたのは佐久間の声。振り返ったら少し距離を保った状態でこっちをじっと見ていた。
なに、その目。どういう感情?
「アクアリウム、社長が好きなんです。景観損ねて怒られるの総務だから言われる前にやっておこうと思って」
「仁奈って変わってるよね」
「はい?」
普通に返答したけど、下の名前で呼ばれて嫌な気はしなかった。
「ウチの会社の総務ってやること少なくて楽なのになんでいっぱい仕事引き受けんの?」
「……性分でしょうか?」
「いや知らねえけど」
質問を質問で返したら「おもしれー」と無邪気に笑われた。
なんだこの人、まったく掴めない。
「ねえ今度デートしよ」
ほら急にデートとか言い出すし……デート!?
「なんでですか?」
「気になってる子とデート行くのに理由いる?」
気になってる子、ではなく利用できそうな女、でしょ?
それにここは会社の玄関だからいつどこで誰に話を聞かれるか分からない。
早く会話を終了させないと。
「検討しておきます」
「うわ、それ絶対いい返事くれないやつだ。
じゃあ連絡先交換しよ」
「はぁ?」
ところが会話は終わるどころか別の方向へ進む。
なになのこいつ、こんな可愛げのない女のどこがいいの?
とにかくたくさんいるであろう女の一部になるのはごめんだ。
「嫌です」
「あっそ、じゃあ総務課の人に教えてもらお」
「え……」
「さすがに総務課は仁奈の連絡先知ってるよね?」
そんなことしたら『佐久間があの愛想の悪い総務にまで手を出した』と噂になってしまう。
それは避けたい。
「ほんといじわるですね」
「ん、その顔かわいい」
仕方なくポケットからスマホを取り出して連絡先を交換することにした。
いじわるだと悪態ついたのに佐久間は満足気だった。