都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「あ、仁奈姉これ、母さんから」


部屋の中に入って、麗から手渡されたのは大きな紙袋。中を覗くと大量のお土産が。
うわ、これ持って移動するの大変だっただろうな。お母さん郵送すればよかったのに。


「え、これ全部?食べきらんけん一緒食べる?」

「じゃあ俺、努努鶏ゆめゆめどり食べたーい」


提案したらすぐ反応したのは類。
少しつり目気味で気が強そうに見えるけど、実際のところお調子者でムードメーカー。
『ねーちゃん』って昔からの呼び方で呼んでくれるのが我が弟ながらかわいい。


「うんいいよ、その前に手洗っておいでよ」

「はいはーい」

「類お前、遠慮って言葉覚えろよ」

「は?ねーちゃんの前やけんっていい子ぶんな」


一方の麗は、類に比べたら少し目元は柔らかい印象を受ける。
頭が良くて気遣い上手で、生まれてこの方モテモテだから個人的に第二の佐久間にならないか心配。

ちょっと軽食に、とお茶を入れて準備をしていたら類が洗面所から戻ってきた。
しかし、その手にはなぜか歯ブラシが握られている。

あ、それ佐久間の歯ブラシ!
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