都合のいい女になるはずが溺愛されてます
その夜、佐久間から電話がかかってきた。
類は「彼氏?」と首をかしげ麗は「彼氏やろ」と見てないのに断定してきた。
私はそうだよと苦笑いで答えて電話に応じた。


『おつかれー』

「おつかれ、もうホテル帰ってきたの?」

『うん、なんとか今日終わったから明日帰れそう。あー、疲れた』

「疲れてるのに電話ありがとう」

『あは、素直な仁奈ちゃんに癒される〜。
で、仁奈の弟たちが俺に会いたいって?』


相変わらずな佐久間にふふっと笑ったら、類と麗の表情が変わった。
こらこら、聞き耳を立てるな弟たちよ。


「あー、うん。でも疲れてるでしょ?無理しなくていいよ」

『いや、俺も会ってみたいからいいよ、さっそく明日帰ってから行くわ。
荷物置いてから行くから夜になると思うけど大丈夫?』

「え、ほんとに来るの?」

『仁奈に会えると思ったら元気になったから大丈夫。
じゃあまた、明日早いから寝るわ』

「うん、おやすみ」


電話を切ると、弟たちの視線が完全にこっちに向いてた。
にしても、佐久間が意外とノリノリで驚いたな。


「来るって?」

「うん、明日の夜にウチに来るって」

「え、来るん?俺やったら付き合いたての彼女の兄弟に会うの面倒くさそうやけん絶対行かんけど。
すげー、大人の対応ってやつ?」


純粋に楽しみにしてる類と違って麗は不満そうだ。


「麗、性格悪〜。粗探しやめろよガキじゃないんやけん」

「はあ?類に言われたくない」

「うるせー腹黒」


でも麗のはたぶん、嫉妬心から出た不満だと思う。
ちょっとしたことから言い合いを始めたふたりをみて、まだまだ子どもだなとちょっと安心した。
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