都合のいい女になるはずが溺愛されてます
部屋に入ると麗は私のベッドの上に座っていた。
佐久間と目が合うと立ち上がってニッコリ笑う。
うわ、綺麗な笑顔だけど胡散臭い愛想笑い。
出会った頃の佐久間もこんな感じだったなとふと思い出した。

するとそれを見かねた類が呆れ気味に笑った。


「えっと、あっちで不貞腐れてるのは弟の麗でーす」

「別に不貞腐れてないんだけど」

「いや、麗の愛想笑いで騙されるのは女だけやけん」


的を得た一言に一瞬鋭い目付きになる麗。
あら、珍しく余裕ないな。


「麗です。はじめまして」


気を取り直して礼儀正しくぺこりと頭を下げて挨拶した麗。
佐久間は「麗くんね、はじめまして」と笑って挨拶を返していた。


「あ、これお土産。とりあえず男子高校生が好きそうなやつ選んだから食べて」

「え、俺らに?」


佐久間は片手に持っていた紙袋を類に渡す。
類はその中を覗いて、とたんに笑顔になった。


「あ、551の豚まん!俺これ好きっちゃん」

「定番だけどうまいよねそれ」

「うん、バリ嬉しい。ありがとうございます!」


満面の笑みで感謝を述べる類に佐久間も満足気。


「類、チョロ過ぎやん」


一方で麗は冷ややかな目で類を見ていた。
ほんと昔からふたりとも個性的だなぁ。
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