都合のいい女になるはずが溺愛されてます
それからしばらく連絡が来るかもしれないと構えてたけど音沙汰無しに2週間が過ぎた。
まあ、そんなもんだよね。分かってる、クズが連絡を寄越す時はヤリたい時だけだ。





「かんぱ〜い!」


……何度目の乾杯の合図だろう。

その日はいくつかの課で集まって合同の飲み会があった。
佐久間はいつの間にか女性陣に囲まれて楽しそうだ。

今日はあの中から誰かお持ち帰りするのかな。
なんて考える自分が嫌で食べることに集中しようと、目の前にあった大皿のレバニラをひとりで平らげた。



「あー、くせぇ」


お開きになってひとりで駅に向かっていたら肩を誰かに押された。
どこぞのおっさんが絡んできたと思ったらほろ酔いの佐久間だった。

あれ、こいつ家反対方向じゃ……。


「2軒目行かね?」

「二次会は?」

「香水くさい女とタバコ臭いおっさんに囲まれるより仁奈と飲みたい」


2週間まったく口を利かなかったのに、まるで昨日会ったみたいに甘えてきた。
かわいいと思うのはだいぶ佐久間に毒されてきた証拠だ。
自分の魅力をよく分かってるなこの男。

ま、どのみち今日は誘われても無理だし飲みに付き合うくらいならいっか。
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