都合のいい女になるはずが溺愛されてます
案の定、そいつはその日から俺に猛烈なアピールをするようになった。
分かりやすく差し入れ持ってきたり、俺のタイプを聞いてきたり。

あのさぁ、興味がないんだって。
以前の俺ならアリかな、と思ったらすぐ抱いてんだわ。
じゃないとそれまで全く興味がなかった仁奈を突然家に連れ帰るかよ。

けどあの女はハッキリ言ったらめんどくさくなりそうなタイプだから察してほしい。
けどいい加減ダルいからそろそろ言わねえと。
あと仁奈に誤解されないように説明しないと。


「あれ、早いね。今日飲みって言ってなかった?」

「今日は広報部来るらしいからやめた」


家に帰ったらパジャマ姿の仁奈がびっくりした顔をしていた。
ちなみに俺は風呂上がりの仁奈が一番好き。
いい匂いするし髪下ろしてるから正直もうたまらない。


「仁奈ちゃん、ただいまっ」

「ちょっと、お風呂入ってないのに抱きつかないで。汚いです」


我慢できなくて抱きついたら汚いですとか言い切る当たりがもうツボ。


「疲れたから勘弁して」

「また何かあったんですか?」

「んー、あのね、嫌な予感がすんの」

「ついに泣かせてきた女の子から報復されるかもですね」


すると仁奈は上目遣いでニヤッと笑う。
予想はズレてるけどかわいいからいいや。


「……好き」

「え、ちゃんと聞いてました?嫌味言ったのに」

「分かってるけど好き」


仁奈と触れ合うとつくづく離したくないと思う。
だから仁奈が離れてしまうかもしれない要因は排除していかないと。

愚痴みたいな形で現状を話したら仁奈は「大変ですね」と鼻で笑っていつもの調子。
さっきからおちょくってきてんな?よほどいじめてほしいらしいのでその夜は泣かせてやった。
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