都合のいい女になるはずが溺愛されてます
さて、今日こそ撒かないと。
そう思って迎えた翌週の昼休み、凝りもせず彩乃って新卒が俺のところに来た。
やっと名前覚えられたわ、つっても興味無いからすぐ忘れそうだけど。


「彩乃ちゃん、ちょっと2人で話そうか」

「っ、はい!」


部署に押しかけてきたから人目につく場所を避けて空いてる会議室に来た。
この時間は誰も使わないから大丈夫。

さて、このめんどくさい女にどうやって分からせるか──


「佐久間さん、好きです」

「……は?」


と思ったら先手を打ってきたのは向こうだった。


「一目惚れなんです。私じゃ佐久間さんに釣り合わないって分かってるけど、この想いを止められなくて。
困らせてごめんなさい」



目を潤ませて上目遣いなのは計算?それとも天然か?どっちにしろタチ悪いなこいつ。

まあ、よく見りゃ顔はかわいいしバカそうだからいくらでも俺に尽くすだろう。
利用できるなら利用してやろうか?

一瞬よぎった考えはすぐ頭の中で消去した。
だってそれは、仁奈と出会ってなければの話だ。


「ごめん俺、彼女いるんだわ」

「知ってます……総務の遠藤さんですよね」

「……岡田に聞いた?」

「はい」


えー?なんでこいつに言ってんの岡田。
別に口止めはしてねーけどめんどくさそうな女に言うなよ。
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